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第5回 創出・編集・実践・検証を循環させる(「医薬経済」04/02/01号)
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◆営業リーダーだけが関与できる
前回は「SECI(セキ)プロセス」について説明した。営業リーダーは、「SECIプロセス」を単独で回すことが可能である。
ただしほとんどの営業リーダーは、それを十分に実施していない。いや、実施していないというよりも、その存在に気付いていない。
「SECIプロセス」は、現場で部下同行をしなければ成り立たない。実例を示したい。
・共同化:営業リーダーは、自分のスキルやノウハウ(暗黙知)を現場で部下に示し、部下に同じようにやらせてみる(暗黙知)。
・表出化:やってみて(暗黙知)成功したことを、チーム会議で他のメンバーに伝えさせる(形式知)。
・連結化:チームメンバーに、発表(形式知)された成功例をメモ(形式知)に取らせ、どの顧客でやってみるかを決めさせる。
・内面化:チームメンバーには、メモ(形式知)をもとに実際に顧客に対してやらせてみる(暗黙知)。
これで「SECIプロセス」は、前回紹介した「愛の貧乏脱出大作戦」のように一回転した。営業リーダーが現場や会議の席で関与しなければ、この循環は実現しない。
前記のように、「表出化」に熱心な企業は多い。それは「SECIプロセス」のほんの一部にフォーカスをあてているにすぎない。
問題は、いかに迅速かつ的確に「SECIプロセス」を回すかなのである。そのためには、全社が一丸となって推進しなければならない。
またMRのレベルアップには、営業リーダーの関与が不可欠となる。営業リーダーは一週間のうち、3から4日はMRとフル同行をする。
企業がこの決意をしたときは、本社や支店スタッフの機能も必然的に変わらなければならない。
営業リーダーが、現場中心に活動する。そのためには、彼らの内勤業務を極力削減する必要がある。
営業リーダーの使命の優先順位も、変えなければならない。部下の育成がナンバーワンとなり、現場発の情報発信が二つ目の使命となる。つまり「個人知」を「組織知」に変え、企業全体で共有するのである。
これまで最も優先順位の高かった「業績の向上」は、二つの使命についてくるものなのだ。
◆知の創出・編集・実践・検証
今回は、「SECIプロセス」と同じような概念を紹介したい。見出しは「創出・編集・実践・検証」としてあるが、「RPDCサイクル」のことである。
RPDCサイクルとは、リサーチ・プラン・ドゥ・チェックの頭文字をとったもので、営業担当者の基本を示している。
「ナレッジMR」の定義も、これと合致している。「自ら調査し、計画立案ができ、それを実行に移し、検証できる人」のことだ。
優れたMRは、「RPDCサイクル」を迅速かつ的確に回している。優れた営業リーダーが、「SECIプロセス」をきちんと回しているのと同様に。
ある顧客を攻略しようとする。MRは顧客ニーズを調査し、それに適した情報を集める。この段階が「知の創出」にあたる。
集めた情報を組み立て、顧客攻略プランを作成する。これが「知の編集」である。それを実践する(知の実践)。最後に成果の検証を行い(知の検証)、次回につなげる。
この過程を、営業活動のバリュー・チェーン(価値連鎖)という。私がMRだったときの上司は、「検証」部分だけにしか関心を示さなかった。成果が上がっていれば、それで満足していたのである。
たまたまラッキーが重なっての販売目標達成。これは翌年の「経験知」にはならない。
MR活動のバリュー・チェーンを的確につないでこそ、はじめて本人の「経験知」になることを忘れてはならない。
「経験知」とは、「知識資産」と呼んでもいいものである。自ら考えて実行したことだけが、「経験知」として蓄積されるのだ。
◆営業活動のブラックボックス
製薬企業はすべてのMRに対して、均一の「インプット」を与えている。インプットとは、情報、知識、経費などのことである。
ところが、「アウトプット」は天と地ほども違う。アウトプットとは、売上や利益のことだ。
なぜ、こうした業績格差が生まれるのか。もちろん、優れたMRとそうではないMRとでは、情報や知識の活用法に違いがあるのかもしれない。
しかし、それ以上に格差を生む原因は、インプットとアウトプットとの間にある「プロセス」部分ではなかろうか。
SSTプロジェクトは、この疑問から出発している。優秀MRと平均的なMRの差は、「プロセス」部分にある。私たちはこの仮説を、検証してみることにした。詳細については、次回以降に紹介したい。
MRは一歩会社を出ると、たった一人で活動する。その様子は、だれも垣間見ることができない。
それゆえプロセス部分は、「営業活動のブラックボックス」と呼ばれている。多くの企業はこの部分を、次のような方法で検証している。
MRが顧客Aへ訪問した回数と、そこでの実績の相関を検証する。
この方法に、異議を唱えるつもりはない。
ただし、この方法は「量的検証」であって、質的な面は浮かび上がってこない。唯一、見えてくるのは、「訪問効率」くらいのものであろう。
◆MR活動の質的検証
では「質的検証」はどうするのか。営業リーダーによる同行しか方法はない。接点での同行では、検証できない。最低でも3日間ほど連続同行しなければ、実態は見えてこない。
なぜなら、MRは上司と同行するとき、自分の得意な顧客へ行きがちである。私が営業リーダー時代は、1週間の連続同行を心がけた。最初の2日くらいまでは、どのMRも訪問効率や顧客の受けがよい。
3日目になると、たちまち在庫がつきてしまう。行ってみると医師が不在だったり、休診だったりする。
営業リーダーが指導すべき点は、こうした顧客に対する攻略法である。MRには、密度の濃い一週間を設計させなければならない。
◆ブラックボックスの中味
内勤職の場合は、四六時中上司が傍らにいる。相談したいことがあれば、部下はすぐに上司のところへ行けばよい。
上司も部下の一挙一動が目に入る。だから、タイムリーな指導が可能だ。
MRの活動はどうだろうか。彼らの活動は、端からは見ることができない。
データー分析では、絶対に垣間見ることのできない世界。それが連続同行により、さまざまなものが見えてくるようになる。ざっと書き出してみたい。
「計画と活動の整合性」「顧客ごとのコンタクトレベル」「ディテーリング力」「クロージング力」「顧客ニーズの把握」「学術資材の活用」「訪問効率」「競合メーカーとの力関係」「顧客からの信用」
MRの「アウトプット」を左右する「ブラックボックス」の解明は、営業リーダーのいちばん大切な仕事なのである。
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