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第7回 身の丈コンピタンシーを活用する(「医薬経済」04/03/01号)
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◆活用されないコンピタンシー
コンピタンシー・モデルを、導入している企業は多い。しかし、重宝されている、という話はあまり聞かない。コンピタンシー・モデルとは、高い業績をあげる優秀な社員の行動様式をまとめたものである。
私がMRだったとき、全国トップの業績をあげる同僚がいた。私とは別のチームだったが、彼の一挙手一投足を参考にしたものである。
現場での彼の活動を垣間見ることはできないので、言動や卸活動のやり方などに注意を払った。疲れてオフイスへ戻ると、彼の車があるか否かを真っ先に確認した。なければ、もう一度顧客へと向かうこともあった。
MRは悩んでいる。優れた業績をあげる仲間の活動を知りたいと思っている。コンピタンシー・モデルは、MRのニーズには合致しているはずである。
しかしコンピタンシー・モデルが多くの社員にとってレベルが高過ぎるのも事実である。しかも情報量が多過ぎて、読むのに一苦労するケースが散見される。
作成側は、しっかりと書かなければ、具体的な行動が想起されないと考える。使い手の方は、活字の洪水に辟易としてしまう。
この温度差が、コンピタンシー・モデルの前に横たわる。またマニュアルを読んだだけでは、スキルやノウハウ(暗黙知)が身につかないという現実がある。
どんな名文家が能の大家の舞を書いたところで、同じように優雅に舞うことはできない。ここに「形式知」(文字、言語など)の限界がある。
◆身の丈コンピタンシー
現在、私は企業がコンピタンシー・モデルを持っているか否かに関わらず、「身の丈コンピタンシー」の普及活動を実施している。
身の丈コンピタンシーとは私の造語で、テーラーメイドのコンピタンシー・モデルと言い換えてもよい。当該MRの現状にふさわしい、コンピタンシー・モデルを作りあげるのである。
同行中の上司がMRに、こんな問いかけを実施する。
「きみの顧客ニーズを探る活動は、(5点満点で)何点だろう?」MRは考えをめぐらせ、「平均的だと思いますので、3点くらいです」と答える。上司が続ける。「では、きみが考える4点の活動って何だ?」
再びMRは考え、「ドクターの蔵書のタイトルから、いちばんの関心ごとを探ることです」と答える。
4点は何だって構わない。本人自身が考え、「1ランク上の活動」を可視化することに意味がある。
「身の丈コンピタンシー」は、自分自身が考えたものだ。上司はMRがそのレベルに達したら、「やったね。4点はクリアした。では、きみの考える満点の顧客ニーズを探る活動は、どういうことをするのだろう?」と質問することになる。
全国の「身の丈コンピタンシー」を集めると、等身大のMRコンピタンシーができあがることになる。コンピタンシー・モデルを持っていない企業には、「身の丈コンピタンシー」の集積(データーベース化)を推奨している。
すでに導入している企業に対しては、「何点?」の質問をしたときにMRが悩んだら、一緒に既存のコンピタンシー・モデルを検索するよう勧めている。繰り返しになるが重要なのは、MR自身がいまより一段階上の活動を考え出す。上司はそれを支持し、支援し、指導することなのである。
MRが「身の丈コンピタンシー」をクリアしたら、心からほめてあげる。そしてさらに上の活動を、一緒に考える。
SSTプロジェクトでは、「身の丈コンピタンシー」を駆使した。当初は一段上の活動を答えられなかったMRが、やがてスムースに「暗黙知」(スキル、ノウハウ)を「形式知」(言語)にするようになる。
SSTプロジェクトでは、優秀MRと平均的なMRのスキルギャップを分析した。まずMR活動のバリューチェーンを作成する。
SSTプロジェクトでは、「知識」「ターゲティング」「アクセス」「ディテーリング」とし、スキルギャップを抽出した。この段階までは、細かい活動にまでフォーカスを当てないこと。こんな具合に、スキルギャップをざっくりと拾い出す。
◎知識
優秀MRノノ現場でのディテーリングを通じて知識を磨いている。
平均的MRノノ机上での知識の獲得しかしていない。
◎ターゲティング
優秀MRノノさまざまな情報源があり、ターゲット顧客に対して明確なゴールを設定している。
平均的MRノノ情報源が偏り、ターゲット顧客に広がりがない。
◎アクセス
優秀MRノノ現場での経験に基づき、ベストのタイミングで面談が可能である。
平均的MRノノいつも定時定点での面談しかできない。
◎ディテーリング
優秀MRノノ必ず次につながる面談を実施し、顧客ニーズに対応した話ができる。
平均的MRノノ極めて表面的なディテーリングしかできず、次へのつながりが生まれない。
◆「何点?」の質問項目を決める
優秀MRと平均的MRの「スキルギャップ」を確認したら、レベルアップさせなければならない具体的な活動を抽出する。
SSTでは、約50件の「何点?」項目を決めていた。これらは、MR活動のバリューチェーンをつなげるために必要な項目である。最初に、MR活動を次の項目に分ける。「市場の把握」「顧客の把握」「計画立案」「卸活動」「薬剤部活動」「開業医活動」「病院活動」「活動の検証」
それぞれの項目には、必要な具体的活動が添えられている。「計画立案」を例に、紹介してみたい。
・月間活動計画書は、常に修正を加えられている。
・重点顧客が網羅されている。
・計画と活動に整合性がある。
・本日の活動目的が明確である。
SSTメンバーは、これらの細目を中心に、指導し続けた。
「計画立案」が「何点?」項目に入っていることを、不思議に思うかもしれない。これってMR活動とは、関係ないと思われるかもしれない。ところが、おざなりな計画は驚くほど多い。ここの指導を怠っては、活動にインパクトが生まれない。
SSTは現場発で、全社的な改善提案も実施した。「月間活動計画書は、現実的に機能していません。週間活動計画に改めるべきです」
実際に指導していて、会社が提供していたツールが改善される。コピー・アンド・ペーストで作成されていた、MRの月間活動計画書は無意味である。
こうした提案ができるのは、あらかじめ指導ポイントを策定していたからだった。SSTメンバーの個別指導にゆだねていたら、全社的な改善はなされにくくなる。
MRのレベルを上げなければならない具体的な活動は何か。事前にそれらを決めておくと、全社的な改善にもつながることになる。
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