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第8回 MRのモチベーションを上げる「共感・賞賛・共有」の話法(「医薬経済」04/03/15号)
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◆ 不快だった助手席の上司
MRだったとき、助手席の上司がたまらなく嫌だった。たまにやってきて、満足な指導もしないままふんぞり返っている。
靴を脱いで、足を助手席の窓まで伸ばす。自慢話に、小言。放屁はするし、昼飯はうまい店へ連れて行けと催促までする。
内地から転勤になってきた上司は、よく居眠りをした。さんざん罵声を浴びせられ、静かになったと思うと船をこいでいる。癪に障ったから、眠った瞬間に急ブレーキを踏むことにした。
びっくりした上司が跳ね起きる。「すいません。カラスをひきそうになったものでノノ」
その上司は、いまも北海道にはカラスが多いと思い込んでいるはずである。
大学病院を担当していたときは、一切エレベーターを使わなかった。猛スピードで階段を駆け上がる。背後から息を切らした上司がついてくる。
せめてもの抵抗であった。普段はちゃっかりエレベーターの世話になっているのだが、同行の日には意図的に階段を昇り降りした。
こんな調子だから、上司同行に相乗効果は生まれない。北海道の冬は、アイスバーンと地吹雪に見舞われる。この季節になると、パタッと上司同行は止む。
私が営業リーダー時代、3回ほど助手席で事故に遭遇した。いずれも冬道でのできごとだった。
高速道路を移動中に、突然地吹雪に見舞われた。視界ゼロ。前の車のテールランプすら見えない。おまけにワイパーが凍りつき、機能しなくなった。
助手席から顔を突き出し、左側の路肩を確認する。MRはフロントガラスに顔を押し当てて、ひたすら車を走らせる。停まったら、追突される。幸い事故にはならなかったが、こんなことは日常茶飯事だった。
◆ 同行には3種類がある
営業リーダーの同行には、3種類のタイプが存在する。多くの企業は、すべてを混同して「同行」と言っているが、それは間違いである。
3種類とは、「営業的同行」「戦略的同行」「指導的同行」のことだ。
「営業的同行」は上司の名刺パワーで、仕事をまとめるときに行う。この同行は、接点でなされる。丸一日付きっ切りの同行とは異なる。
「戦略的同行」は、重点顧客への定期的なあいさつ回り。これも丸一日のフル同行は不要だ。
これらの同行で、MRはレベルアップするだろうか。「あの上司はよく部下と同行している」との評価を耳にするが、これらの同行が主体のケースは多い。
同行とはOJTのことであり、紛れもなくオン・ザ・ジョブ・トレーニングのことなのである。
大切なのは「指導的同行」である。この同行は、丸一日でなければならない。しかも「指導の連続性」が必要となる。
指導の連続性とは、毎日という意味ではない。あらかじめ定めたMRの育成プランに従った、定期的な同行という意味だ。
この「指導的同行」がなされていない。私はこれしか「同行」と認めていない。なぜなら、同行はMRのレベルアップのために実施するのだから。
◆ 共感・賞賛・共有の話法
部下を気持ちよくさせる話法を紹介したい。同行の車中で、活用する話法である。営業リーダーは、次の訪問先についてMRに問いかける。
上司「次の訪問先は、きみが担当する前はどうだったの?」
MR「引継ぎも十分ではなく、定期訪問もなされていませんでした」
上司「そりゃ、たいへんだったね」
上司は「過去」を問いかけて、「共感」している。過去を問われると、ほとんどのMRはため息混じりに「たいへんでした」と答える。営業リーダーは、心からそれをねぎらってあげる。
続いて、営業リーダーは「現在」を問いかける。
上司「それで、いまはどんな努力をしているの?」
MR「定期訪問を行い、やっとドクターが固有名詞で名前を呼んでくれるようになりました」
上司「それはすごいね。がんばったな」
「現在」を質問すると、MRは一様に目を輝かせて自らの努力を説明する。営業リーダーは、MRの努力を「賞賛」してあげる。
最後は、「未来」へと質問を移す。
上司「きみが努力をした結果、どんな成果が上がるの?」
MR「__の新規採用をねらっています。もうすぐだと思います」
上司「楽しみだね。私に協力できることがあったら、何でも相談してくれ」
これで営業リーダーは、MRと「未来」を「共有」することになる。「過去」「現在」「未来」と質問を重ねることにより、「共感」「賞賛」「共有」のリズムが生まれる。わずか一分間でできるこの話法は、MRに心地よいリズムを与える。
私はこの話法を「PPF」と命名し、多く企業に推奨している。PPFは、Past,Present,Futureの頭文字をとったものである。
◆ 顧客攻略履歴として活用
「PPF」は「顧客攻略履歴」として、大切なデーターベースとなる。たとえば、Aという顧客に関して、何ヵ月後かに「PPF」を行ってみる。
二回目以降は、「過去・現在・未来」という形での質問をしない。「前回まで」「今回は」「いつ成果が上がるのか」という形で、問いを投げかける。
上司「__の新規採用活動の進捗状況はどうだい?」
MR「なかなかウンと言ってもらえなくて、困っています」
上司「今日は、どんな話をするの?」
MR「前回頼まれた文献をお持ちしたので、それで説明したいと思っています」
上司「何とか、今月中に採用へこぎつけたいね」
MR「今日こそ、説明会開催にオーケーをいただきます」
上司「私からもお願いするよ」
MRの話が未来軸の方に動いていたら、攻略は順調に進んでいることになる。前回と同じ状態なら、進展が認められないと判断できる。
営業リーダーは、顧客ごとに簡単な「PPF」メモを作成する。それをデーターベースとして蓄積すると、「顧客攻略履歴」となるのである。
このデーターベースは、MRの担当交代時に威力を発揮する。MRの活動が具体的に見えるし、攻略状況も掌握できる。
「PPF」は、同行時にだけ使う話法ではない。オフイスのなかでも簡単に実行可能だし、会議のプログラムとしても有効である。
何しろ、わずか1分間で聞き取りができるのだ。前回紹介した「身の丈コンピタンシー」同様、手軽に活用していただきたい。
MRは自分の仕事を、上司に理解してもらいたいと思っている。会議の時の詰問とは違い、この話法はMRを気持ちよくさせる。
大切なことは、現状を可視化させることだ。営業リーダーはMRに対し高望みすることなく、ちょっとずつ目標のハードルを上げてやる。できたら、心からほめてあげる。それを繰り返せばよい。
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