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第9回 朝書きの日報はコミュニケーションのツール(「医薬経済」04/04/01号)
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◆ 日報分析は意味がない
日報からデーターを抽出して、本社がせっせと管理する。これって、だれのために実施しているのだろうか。少なくとも営業現場では、そのデーターは活用されていない。だれもが日報の記載内容はあてにならない、と知っているからだ。
私も日報に関しては、いい加減なMRだった。日報を書く必然性が理解できなかったのだ。常に「書かされている」といった、被害者意識がつきまとっていた。
当時の上司は、日報提出に口うるさかった。ずっと日報を書かなかったMRの営業日当を止めてしまったほどだ。しかし、その上司の「未決」トレイには、いつもうず高く日報が積み上げられていた。
日本ロシュ時代にコンサル会社の指導で、「コールシステム」なるプロジェクトが立ち上げられたことがある。
MRの日報から、「訪問件数」「面談ドクター数」「総コール(宣伝)回数」「主力品のコール数」などを求めるものだ。マークシート方式に改められた日報を見たとき、MRと上司のコミュニケーションが寸断されたと感じた。
当時、営業企画部長だった私は、頭ごなしに導入されたその制度に猛反発を唱えた。営業の世界をまったく知らないメンバーによる愚挙。そう主張したが、聞き入れてもらえなかった。やがて支店長からの反発で、「コールシステム」は頓挫してしまう。
SSTプロジェクトを通じて、大切なのは「量」よりも「質」であることが証明されたからだ。良質な活動をするMRは、必然的に十分な量をもこなす。量を追求する営業管理は、日報を劣悪なものにしてしまっている。一概には言えないが、私はそう考えている。
◆優秀なMRは予定メモをくれる
MRと同行すると、本日の訪問予定をくれる場合がある。こうしたMRは、たいがい優秀だった。いつ終わるともしれない、同行は疲れる。一枚のメモが、同行にメリハリを与えてくれるのである。
ある日、閃いた。日報を出掛けに書かせよう。ほとんどの日報は、施設名、面談医師名、宣伝品目、使用資材、結果といった書式であろう。
私は営業リーダー時代、出掛けに結果以外を書かせることにした。行ってみて会えなければ、コメント欄に「会えず」と書けばよい。本日の訪問目的が明確になり、MRが帰社したときには日報は完結している。
「朝書きの日報」により、MRの訪問効率が向上した。訪問目的が明確になることで、面談の準備が整うようになった。そして、営業リーダーは帰社したMRと、日報をはさんで本日の活動を振り返ることができるようになった。
「朝書きの日報」は、MRが自分自身のために作成している。コメント欄は、待合室や車のなかで書くことは可能だ。だからMRは一日の仕事を終えた刹那に、日報を書き終えている。
マークシート方式の日報と、「朝書き日報」の違いは歴然としている。現在コンサルティングをしている企業では、日報を朝書きに変えた。おまけにコメント欄を、「PPF」(過去・現在・未来)方式の記載に改めた。「前回・今回・次回」と書く方法である。この日報は、データーベースとして管理されている。一日の訪問先で、最重点顧客に関してだけ「PPF」で記載しているのだ。一例を示そう。
・前回「__の新規採用をねらう。考えておくとのこと。これは拒絶の意思表示だ」
・今回「困っている患者さんがいるのだけれど、__は効くかな? 明日、文献をお持ちすることにした」
・次回「とにかく一例、試していただく。処方が出れば、毎日フォローアップを実施する」
この日報で、営業リーダーが部下の活動が手に取るようにわかると言う。一日に一件だけ、「PPF」方式で詳細を書いてもらう。
この積み重ねが、企業にとって大切な「知的財産」となるのだ。「PPF」は、MRにとって結構プレッシャーになるようだ。何しろ、記載が未来軸へと移動していなければ、攻略がうまく行っていない証になるのだから。
「PPF」は、顧客攻略履歴として活用できる。MRの引継ぎ時に出力することで、前任者の攻略模様が一目でわかる。MR活動が、未来軸に向かって確実に動いていれば、成果は必然的についてくる。
◆6つのキーワードを使う
顧客攻略をアクション・プランとして落とし込むには、6つのキーワードを網羅する必要がある。6つのキーワードとは、次の通りである。
@ どこで(病医院名)
A だれに(医師名)
B なにを(製品名)
C どんな方法で(手段)
D いつまでに(期限)
E どこまで伸ばすか(成果)
営業の世界には、「積み上げ会議」なるものがある。今月中に、どこで、なにを、いくら売上げるのか、の見込みを立てる会議である。
この会議には、6つのキーワードのなかでいちばん大切な「Cどんな方法で」が欠落している。MRのレベルアップを考えるとき、Cを抜きにしては語れない。
「積み上げ会議」は、非生産的な時間なのである。予想(よそう)や予測(よそく)を、下から読んでみて欲しい。恥ずかしくなる単語ではないか。
日報にも、6つのキーワードは不可欠である。特に「Cどんな方法で」と「Dいつまでに」「Eどこまで伸ばすか」は、極めて大切なポイントである。
◆SSTと朝書きの日報
もう一度繰り返すが、日報を管理用ツールとしてはならない。「量」を検証したところで、「質」が伴わなければ何の意味もない。
マークシート方式の日報には、MRがその日の活動を振り返る余地がない。文脈が整った日報でなければ、コミュニケーションのツールとして活用できない。
日報でMR活動を推し測るのは、前近代的な手法である。MRは現場で上司が同行指導しなければ、レベルアップすることはない。
日報を書くのは、外勤職の義務であることは承知している。私は日報廃止論者ではない。書いているMRに跳ね返ってくる日報に改めよ、と言いたいのだ。
「朝書きの日報」は、SSTプロジェクトでも活用された。SSTメンバーは、どの「学術資材」を使って、どんな「話法」で話をするのかを大切にしていた。
MRは「朝書き日報」を書き、必要な学術資材を広げて、話法の練習をする。SSTメンバーが、何度もやり直しを命ずる。
製品別ファイルには、本日の面談医師ごとに活用する学術資材が収められている。
病院へ行ったらカバンを廊下に置き、ファイルノートを小脇にはさんで駆け回る。いちいちカバンのなかを探すことはしない。本日の使用資材と話法は、決まっている。
MRのコール(宣伝)数と医師の製品認知度には差がある。病院担当MRと開業医中心のMRでは、コール数は倍近くの差がある。
コール数神話は、とうに崩壊している。大切なのは、どのくらいインパクトのあるコールをしているかを掌握することなのだ。それは、同行しなければわからない。
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